介護ができなくなったっ!
受験老人は昨年の正月以来、両親の介護に奔走することになった。
まず軽い認知症のあった母が、転倒・骨折して寝たきりになった。
それを90歳を過ぎた父が介護を始めた。典型的な老々介護だった。
だが、普通の寝たきりでない。認知症である。
母は昼夜構わず、大きな声を出しては父を起こし、その睡眠を妨げた。
父はかいがいしく母の食事や排せつの世話をした。
母は中途半端な寝たきりであり、ベッドからはい出て歩き回るので始末が悪かった。
父は睡眠不足とストレスで健康を害した。
その頃から受験老人は定期的に帰省するようになった。
帰省している間は食事を作り、洗濯し、散らかり放題になっていた部屋の片づけをした。
ディサービスを利用させていたものの、それだけでは足りなかった。
このため母を介護老人保健施設(老健)に入院させた。
そこには長くおられず、数か月後には老人ホームに転院させた。
入院させたことで、とりあえず安堵した。
しかし一方、今度は父のことが心配になった。
母と2人で仲良く生きていたのに、いきなり1人での生活になったのである。
心配になり、いきおい帰省の回数は増えた。
やはり家を離れ、遠くに住んでいる姉と交代で、隔週で帰省した。
帰省すると土日のほか、余分に1、2日はいた。
そしてその間、毎日母の見舞に行くことができた。
このためたまっていた有給休暇があっという間になくなった。
その代わり、3食を作ることで受験老人の料理のレパートリーは広がった。
帰省のたび、父は喜び、また、こちらに帰ってくるときは、父は少し寂しそうにした。
見舞った母も同じだった。また来てくれと私にすがった。
だが、毎週、私か姉が帰るので、父も元気を出した。
今年1月のインフルエンザと肺炎も、父は強靭な体力で何とか乗り越えてくれた。
しかし、ここにきてコロナ騒ぎである。
まず、母の入院していた施設は、見舞いに行っても会えなくなった。
そして4月になってからは、私も姉も、帰省ができなくなった。
いざとなれば、当然帰省はできる。
だが、もし万一、自分がコロナに感染し、それを親にうつしてしまったら、どうするか。
・・・・取り返しがつかない。
しかし・・・・ITは便利だ。
父は、思い立って昨年冬、スマホを購入した。
最初はおそるおそるだったが、そのうちうまく使いこなせるようになった。
まさに90の手習いである。
最近は毎朝、私や姉とラインでのやりとりをしている。
「今日、朝起きて体操した。」
「おいしいみそ汁を作った。」
「畑を耕した。」
「パソコンで囲碁をやった。」
そんな、毎日変わらない連絡が来る。ちょっとした感想をつけて。
でも、それがありがたい。
その都度、こちらも返信すると、すぐに既読になる。
お父さんお母さん、ゴールデンウィークは帰れないけど、どうか元気でいておくれ。
きっとコロナは収束するだろうから。
母はまだ、私のことを覚えてくれているだろうか・・・・。
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。