受験老人日記~高齢で医学部と司法試験に大挑戦~

58歳の何のとりえもない男が、医学部と司法試験を同時に、しかも短期間で合格することを目指すという無謀な冒険に乗り出した

東大生にはなったけれど


私は上京した。


受験まで一度も東京に来たことがなかったため、全てが新鮮だった。


だが、本当は不安の方が大きかった。


自分は今までは、生活面がだらしなくても、勉強ができるということで皆にアピールすることができた。


しかし、東大生は皆勉強ができる。私には皆に誇れる取り柄がなかった。


私は劣等感に苛まれた。



授業に出ても、講師の言うことが難しくて聞き取れなかった。


目も悪いため、ノートに黒板の板書が書き写せなかった。


そうして、どんどん授業が分からなくなっていった。


完全に落ちこぼれてしまった。



私はそのうち、授業に出なくなった。


授業に出ても、どうせ分からないからだ。


だが下宿をしていた家の奥さんが厳しい人だったため、仕方なく毎朝、家を出た。


下宿を出ても授業に出るのが億劫だった。


毎日、歩いて渋谷まで行った。


大きな書店があり、そこで本を立ち読みした。


そして、ゲーム店に行った。ブロック崩しやらインベーダーゲームやら。


腕前は超一流になった。


それから向かうのはパチンコ屋。当時はまだ手打ちが主流だった。


負けることが多かった。これでもか、これでもかと100円玉をつぎ込んでは玉を小出しに買うが、玉はチューリップには入らず、消えていった。


親からの仕送りはある程度あったが、毎月お金を使い果たしそうになり、そうなった時はほとんど飲まず食わずで過ごした。



私は授業にほとんど出ないおかげで、前期試験はひどい成績をとった。


いくつかは単位を取り落とし、留年をする可能性もでてきた。


大学入学前に持っていた希望は失せた。ノーベル賞など夢のまた夢だということが分かった。



ああ、自分はいったい何をやっているんだろう。


そう思いはするものの、身体がいうことをきかなかった。


堕落した生活は改まらなかった。


これが田舎で秀才と呼ばれた男の末路だった。