受験老人日記~高齢で医学部と司法試験に大挑戦~

還暦を迎えた男が、医学部と司法試験を同時に合格することを目指すという無謀な冒険に乗り出した

PCR顛末記~その2

帰省中に高熱を出し、病院でPCR検査を受けた受験老人である。
結局、陰性と診断され、入院は一日でそのまま両親の家(桃源郷)に戻った。


まだ熱は引いておらず、勉強はやる気にならなかった。
だが、現金なものである。陰性と診断されただけで、ちよっと元気になった。
そして、心配かけた父のため、それからは3食、食事の用意をした。
(メニューを考えるのは大変だが、受験老人もずいぶん料理は上達した。
当然マスクはつけ、食事中は父との距離は取った。)


そして何日か後、再び病院へ。最終的な判断をしてもらうためだった。
レントゲン、それから血液検査。
医師は言った。「大丈夫ですよ。」
受験老人は安堵した。これでやっと解放された気になった。


ただ、医師の言葉に、ちょっと引っかかるものがあった。
「今回レントゲンを撮ったが、相当進んだ肺炎でないとレントゲンでは分からない。
だから貴方の肺炎がどうなっている分からない。進んでいないのは確かだが。」
・・・・分からないのか。じゃあまだ病巣残っている可能性もあるのか。


そう言えば、PCR検査は30%くらい偽陰性が出る、つまり、陰性と判断されても実は陽性であるケースが30%もあると、どこかで読んだことがある。
「じゃあ、もう一度PCR検査をして確認する必要があるのでは?」
受験老人はそう、食い下がった。


だが、医師は首を横に振った。
「陽性になった患者は、その後2回連続陰性になるまで検査を繰り返さねばならないが、
最初から陰性の患者には、それ以上何もやることはない。」
そして、医師は、血液検査の結果をいろいろ説明した。
炎症に関係する部分以外は正常に復していると。
陽性である可能性は限りなく低いと。


受験老人はその言葉にやや安堵した。
ただ、偽陰性のことを思うと、わずかばかり疑念が残る。
そして、ちょっと思った。
自分はがんではないか、と心配するのをがんノイローゼ、つまりがんノロと呼ぶ。
世の中には、コロナに感染したのでは、と過度に心配する人たちも多いのではないか。
それは、将来「コロナノロ」と呼ばれるかも。あくまで受験老人の造語だが。


そして、早速、問題なかった旨を職場に伝えた。
今週は大事を取ってテレワークにするが、来週からは出勤するからと。


・・・・だが、担当者からの回答
「PCRを受けた場合は、たとえ陰性でも、2週間は自宅待機になります。」


・・・・・しまった。
そう言えば、職場のコロナのマニュアルはそうなっていたのだ。
PCRを受けただけで、2週間。謹慎のようなものかも。
家にいられてマイペースでやれ、ほっとするという気持ち全くはなかった。
むしろ、職場の皆に申し訳ないという気持ちが強く、安堵は後悔に変わった。


・・・・受験老人には、PCRが陰性だったからいいだろうという思い込みがあった。
職場の皆には、一切迷惑をかけていないという自負があった。
陽性だったら周囲の者も濃厚接触者として2週間休まねばならないのは知っていた。
だから、前回のブログで書いたように、
職場で最初の陽性者が出ても非難しないよう、わざわざ呼びかけた。


だが、今となっては、それは単なる自己弁護のように思えてしまう。
陰性でも自分は休まねばならないことを知らなかったのは迂闊だった。
PCRを受けた時点で、既に皆への迷惑が発生していたのだ。非難を受けて当然だ。


思いをめぐらせた。
それなら、もう少し様子を見て、何日か熱が続いた時点でPCRを受ければよかったか。
退院した次の日には熱もかなり下がった。つまり4日も高熱は続かなかった。
しかも、自分の肺炎はCTでないと分からないくらいの微小なもの、大したことはない。
高熱になったからと言って、いきなりPCRを受けると頼み込まねばよかった・・・・。
東京から来たということで検査実施にOKをもらったが、本来重篤な症状ではなかった。


しかし、逆に、万一陽性だったとしたら、と思うと、その考えはすぐに否定された。
自分だけでなく家族や、職場の皆にもっともっと大きな被害が及んでいただろう。
だから、あの段階では受けるしか選択肢はなかった、受けて正解だったのだ、
そう思い込もうとした。


しかし、そもそも受験老人は勤め人として失格だった。
本来、健康管理はプロの職業人の務めである。でないと職場に迷惑をかける。
受験老人の現在の職場はとりわけコロナ対策で多忙を極める職場である。
皆、ほとんど毎日出勤している。テレワークではできないこともあるのだ。
その中で、ずっと出勤できないことがどんなに皆の迷惑になるか・・・・。


今回の肺炎の原因を医師に聞いたところ、次のような答えが返ってきた。
60歳くらいの元気な者が、細菌(肺炎球菌等)に感染して肺炎になることは普通ない。
原因は、ウイルス性である場合が高い。おそらくコロナ以外のウイルスだろう。


・・・・いったい、どこで感染したのか。受験老人には心当たりはない。
しかし、その直後、考え直した。心当たりだらけだった。
受験老人はマスクは常に着用はしている。当たり前である。
だが、いろいろなところに平気で触る。電車の座席、つり革、ドアノブ、手すり。
そしてその手を、鼻を搔いたり口元に持って行くことも多い。
感染の危険に満ちていると言える。
安全対策が全くなっていなかったのだ。本当にプロとして失格だ。


そして、さらに考えると、こんな不注意な自分が医療者になれるのかという疑問もわく。
患者さんからあっという間に感染し、しかも高リスク群の受験老人は重篤化する。
・・・・頭を打たれた。


とにかく2週間のテレワークになったわけだ(今週末まで)。時間はたっぷりある。
仕事には懸命に取り組むと同時に、そのことについて、もっともっとよく考えたい。