宗教、死後の世界、超能力(その2) 宗教に勧誘されやすい人
受験老人の宗教遍歴を話す。
受験老人が生まれた時から土着の宗教の家に生まれたのは前に話した通りである。
受験老人は子供のころから定期的に手踊りのおつとめをして神様に祈った。
神様は着物のように自然な形で受験老人の身体に身についた。
困ったときは神様にお願いし、よいことがあると神様に感謝した。
信者の人たちはみな優しかった。だから世の中は良い人ばかりなのだと信じた。
そうした習慣がない他の子どもたちを見て、なぜ皆は温かい気持ちが持てないのかと不思議に思った。
そう、受験老人は、とても純粋で、純朴な子供だった。
高校の頃だったろうか、ある女友達が受験老人のことを評して、こう言った。
「あなたは宗教に勧誘されやすい人ね。」
それは決して誉め言葉ではなかった。
きっと受験老人があまりに優柔不断なのを見て、そう言ったのだろう。
人間としての軸がなく、ふらふらしている。
いかにも頼りなく、何にでもなびいてしまいそうだ。そういう意味だったのだろう。
大学に入り、上京すると、受験老人は街角での販売や通信販売によく騙された。
親からの仕送りを無駄にしては後悔した。
いろいろなことに免疫ができておらず、すぐに人に騙されるのだ。
しかし性懲りもなく、それを繰り返した。お人よしにも程があった。
その頃、受験老人は授業をよくサボっていたが、どうしても出席が必要な科目があった。
それは科学実験。毎週、二人で組をつくって実験をやり、その後、一緒にレポートをまとめなければならなかった。
今のようにパソコンやインターネットという気の利いたものがあるわけではない。
分からぬところがあったら、後で直接会って話をしながらレポートを作らねばならない。
受験老人のパートナーは、Aというずんぐりした男だった。
鈍で、ぼうっとしていて、お人よしに見えた。
何年か浪人か留年を繰り返しているらしく、受験老人よりずいぶん上だった。
だが、受験老人は、そんな彼に、なぜか自分と共通点を感じていた。
ある時、実験データのすり合わせをするため、彼に電話した。
すると、家に来てくれと言われた。幸い住所は近く、受験老人は歩いて彼の家を訪ねた。
しかし、そこにあったのは
・・・・・
なんと教会だった。何人かの若者たちが、そこで共同生活をしていたのだ。
そして、その教会の名前を聞いて、さらに受験老人は驚愕した。
それは、統一教会。
当時、T大は、共産党の傘下にあった民政が支配していた。
その民政は、この統一教会の学生組織である原理研とは烈しくやりあっていた。
民政の言うには、原理研に勧誘されたら最後、完全に洗脳されてしまい、
財産も全部寄進し、親も捨て、大学もやめざるを得なくなると。
受験老人は、まさにそんな組織の真っただ中に来てしまったのだ。
受験老人はAとレポートの話をし終わり、帰ろうとした。
すると、その時、少し年上の、いかにも頭の切れそうな男が出てきた。
「やあ、せっかく来たんだから、少し話を聞いていきませんか。人間が何のために生まれ、生きているのかよく分かりますよ。」
・・・・以下続く。
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。