受験老人日記~高齢で医学部と司法試験に大挑戦~

還暦を迎えた男が、医学部と司法試験を同時に合格することを目指すという無謀な冒険に乗り出した

希望は残された

さて、読者の方々には気を引かせてしまい、申し訳なかった。
大学から送られてきた封筒を開けて中の紙を取り出した。
すると、最初に目に飛び込んできたのは自分の得点だった。






なぜ私がおやっと思ったかと言うと・・・・。
803点・・・・昨年の786.5点に比べ、20点近い上昇だ。


これで落とされたって言うことは・・・・
その刹那、受験老人の脳裏に飛来したのは、
「また面接で落とされたのか。」というブラックな感情だった。







しかし、その後、目をつつつ・・・・と下におろすと、合格者最低点が分かった。








「810点」
・・・・合格者最低点は、昨年の781.5点に比べ、30点近い大幅アップになっていた。
つまり、受験老人は7点差で落ちたのだった。



・・・・なぜか、受験老人は爽やかな、すがすがしい気持ちになった。
セリヌンティウスよ、お前を1度でも疑って悪かった・・・・
受験老人は赤面した。


今度こそ、大学側はきちっとした土俵を受験老人に与えてくれたのだ。


最初の面接終了後、答え方がはっきりしなかったということで、2割近くの受験者が再面接として呼び出しを受けた。
つまり、その人たちは面接で落ちる候補だったのだ。


しかし、受験老人は呼び出しを受けなかった。だから面接はうまくいったのだ。
おそらく、受験老人が、きちんと自分の志望理由を表明したことが功を奏したのだろう。
(逆に、箸にも棒にも引っかからなかったのかもしれないが。)


そして、決して門前払いを受けたのではないことが分かり、受験老人は安堵した。
その可能性もわずかに否定はできぬが、しかし希望は残された。



今回の試験では、受験老人にはいろいろなアクシデントがあった。
ある大問は丸ごと解くのを忘れた。またある大問は別の回答欄に書いて、大減点された。
ほとんど直前まで大学入試の勉強しなかったうえに、
受験科目を二次試験直前になって「物理」から「生物」に変更した。
高校生物の勉強は1か月強しかできなかった。


それでも、センターと二次試験の合計点は昨年を上回っていた。
受験老人が不合格だったのは、おそらく大学が今年、合格者定員を減らしたことが原因かもしれない。
去年と同じ定員だったら、おそらく合格者最低点を上回っていただろう。


まっくどくど言い訳はしない。(しているが・・・・)
本当に実力と才能があれば受かっていたはずだ。


そして受験老人の頭には、なぜか昔読んだガラスの仮面の一場面が浮かんできた。
類まれな演劇の才能を持った北島マヤが、多くの苦難を乗り越えていくマンガである。


乙部のりえの策略により芸能界を追放され、マヤはついに演劇をやめることを決意する。
そうして意を決して立った最後の舞台で、主役を演ずるライバル姫川亜弓の前で、悪者のたくらみにより泥饅頭を出される。その饅頭を食べなければ舞台は続かない。
その時マヤは思い出した。「おらはトキだ!」
役者になりきり、マヤはその泥饅頭をむさぼり食った。後のことはなりふり構わず。
そうすることで、マヤは役者としての本能をよみがえらせる。
そして、マヤは役者として再出発することを目指す。「アメンボ赤いなあいうえおっ」


受験老人は、マヤのように、勉強するという本能を蘇らせた。
ようっし、次こそ、次こそは万難を排して受かろうっ。
少なくとも合格者平均点、いや、最高点での合格を目指すぜっ。
こうしてせっかく機会を提供してた大学の恩に報いるために!(何のこっちゃ??)


まっこんな受験老人だが、読者の方々にはあと1年だけ、お付き合い願いたい。
(司法試験合格まで含めると何年もかかるだろうが・・・・。)