受験老人日記~高齢で医学部と司法試験に大挑戦~

58歳の何のとりえもない男が、医学部と司法試験を同時に、しかも短期間で合格することを目指すという無謀な冒険に乗り出した

あがり症再び


実力テストで1位を取ったことで、私は皆から一目置かれるようになった。


悪い気持ちはしなかった。こそばゆくもあった。


その後、定期テストではダメだったが、


2学期になって実力テストで再び1位を取ると、私はますます注目された。


決して1学期の実力テストがまぐれではなかったことを実証したわけだ。



特別に時間をかけて勉強をしているわけではない。ただトレーニングペーパーを3科目、毎日やっているだけである。


部活をやり、通学時間が長いこともあって、1日の勉強時間は3時間にすぎなかった。


だが極めて効率がよかった。家に帰ると集中して取り組めた。


とにかく1つの教材をとことん続けてやったのがよかったのだと思う。



勉強ができること。それが私の生来のだらしなさ、ずぼらさを覆い、私は優等生というレッテルを貼られた。


しかし、問題が起きた。私の心の乖離があった。


本来、私はそのように皆に注目され、尊敬されるような人間ではなかったのである。


それだけ人間ができてはいなかったのだ。何も考えてはいなかったのだ。



ある日、クラスの皆が3年の教室に移動した。私は何かわからなかった。


私はそれまであまりよく知らなかったが、毎年の体育祭では、1年生から3年生までが縦割りになって、同じチームとして一緒に活動することになっていた。


その結団式というのがあったのである。


私はそこで3年生のそれぞれの役員が入れ代わり立ち代わり演説をするのを聞いた。


いやあ、3年生ともなると立派だなあと心から思った。


だが、その場で私はいきなり、「それでは1年生の代表の○○君に何か覚悟を言ってもらいます。」と指名されたのである。


私は不意を突かれた。成績優秀だということで、私はクラス委員をしていたのである。


しまったと思った。全く準備をしていなかった。


私の心臓は早鐘のように鳴り出した。皆が私を注目している。


その時、私は何を言ったか、全く覚えていない。何も言う言葉がなかった。


何か気の利いたことをしゃべりたい、と思ったが、何も出てこなかった。


何も言えず立ち尽くし、そのまま引っ込んだ。



まずかった。中学校以来、あがり症が勃発したのだ。