受験老人日記~高齢で医学部と司法試験に大挑戦~

58歳の何のとりえもない男が、医学部と司法試験を同時に、しかも短期間で合格することを目指すという無謀な冒険に乗り出した

頭が確実に悪くなった!


そうして、私はひたすら、勉強した。


仕事もあるが、その合間を縫うようにして。


とにかく、毎日8科目、少しずつでも、意地でもやり通そうと思った。



勉強は、新鮮だった。


医学部受験に関して言えば、約35年ぶりの勉強である。懐かしい。


そして、どの科目も、初めの方は導入で、簡単なもの、基本的なものから入っている。



たとえば数学は、因数分解とか。ほどなく思い出した。


aの3乗+bの3乗+cの3乗−3abc=(a+b+c)(aの2乗+bの2乗+cの2乗-ab-bc-ca)・・・・


化学も、理論から勉強し始めたが、苦労して物質名等を覚える必要がないため、楽だった。


物理も、力学から始めたが、一から改めて理論を勉強したため、まあまあ分かった。


ただ地理は、系統地理からやり始めたものの、ほとんど覚えられなかった。気候や土壌のところでつまずいた。


村瀬の参考書がわかりやすく、網羅的でもあることは分かっていても。



一方、司法試験は、新鮮だと思えたのは最初の数日。すぐにつまずいた。


自分は法律については、実は何も知らなかったことがよく分かった。


大昔、国の試験を受けた時は、一切、法律の勉強はしなかった。しかしそれでも何とか受かった。


じゃあ行政で、実際に法律の知識を使うかというと・・・・


そりゃ、担当している業務の関係の法令を十分知っておくのはマストだ。


だが、その法令についてはやたら詳しくなっても、それだけである。



私は法令の改正にも携わったことがある。


ただ、それは条文をああでもない、こうでもないとひねくり回しただけだった。


いろいろなところへ根回しをしたり、答弁を考えたりと、現実の世界に気を配っていた。


これらを改めて学ぶと、なかなか理解ができないのである。


本当は、実際に法律に接して業務を行っていたのだから、すうっと入ってこなければならないはずなのだろうが。


やはり、法律は堅苦しくて苦手なのである。そんな人が司法試験を目指すのも変ではあるが。



こうして、地理や法律でつまずいたことを改めて考えると、いずれも私にとって全く新しい分野だということだ。


つまり、初めてのことが吸収できないのである。


一度やったことがあること、慣れ親しんでいることだけは対応できるが、全くやっていないことは対応できないのだ。


こりゃ、老化の最たるものだ。


いつのまにか、私の頭は、固く固くなっていた。確実に頭は悪くなっていたのである。