受験老人日記~高齢で医学部と司法試験に大挑戦~

還暦を迎えた男が、医学部と司法試験を同時に合格することを目指すという無謀な冒険に乗り出した

高校の成績が証明できないっ!

うっかりしていたこと、それは、大学での二次試験のための願書の提出だった。


でも、そのためには、出身高校の証明が何か必要だったんじゃなかったっけ。


私はそのことをセンター試験の出願時に、子供から聞いていたのだが、すっかり忘れていた。


そうだ。出身高校の成績証明書だ。高校でどんな成績をとったかという証明書だ。


 
だが私のように卒業から何十年も経っている者は高校も成績を保管していないんじやなかったっけ。


実際に出身高校のホームページを開くと、成績証明書は卒業後5年以内の者しか発行できない、と書いてある。


まっ大丈夫だ。高校が成績を保管していなけりゃしょうがない。そのことが受験で差別される原因にはならないと思うが。



そして、私は当面、受験しようとする大学の募集要項を取り寄せた。


おそらく、成績証明書が高校で出せない場合は不要だと書いてあるはずだ。


ところが・・・・愕然とした。



事情により成績証明書が発行できない場合は、その旨を学校長が証明する書類が必要だと書いてある。


・・・・面倒なことになった。こりゃ、普通の手続きじゃないから、高校の担当者に説明しても、はたして発行してもらえるかどうか・・・・。


発効してもらえるとしても、今から手続きをして間に合うのか。私が高校を卒業したのは40年も前のことだ。


締切りに間に合わなくなるのではないか。



私はおそるおそる、出身高校へ連絡した。


センター試験を受験したときには、再就職に必要だからと適当なことを言ってごまかした。だが今回ばかりはそうはいかない。


私は電話に出た担当に、本当のことを言った。「退職を機に、大学に行ってもう一度勉強しなおしてみたいと思うのです。」



担当者が答えるのにやや間があった。「そうですか。よくがんばられますね。」


おそらく、相手は私が大学に行っていないから大学に入ろうとしているか、又は歴史学とか社会学とか、いわゆる年取ってからもできそうな学科を受けようとしていると受け取ったと思う。


医学部に行く、と言ったらきっと腰を抜かすにちがいない。


その高校は山の中にある高校で、東大に入るのも1年1人いるかいないかというところだった。医学部も然り。


だから、こんな年をとって一から受験勉強をしたとしても、到底(←この漢字はセンター国語で出た!)そんなところには行けないだろうし、目指しもしないだろうと。


だが、とりあえず、そのことを問い詰められることはなく、何とか、成績証明に代わるものを送ってもらえることになった。



私はその後、ある事情があって4日間ほど家を空けた。そして昨夜4日ぶりに戻ると、おおうっ、高校から早くも封筒が届いていた。


そこには、成績証明書が発行できないことを校長名で証明する旨の用紙が2枚、入っていた。2枚とは前・後期用である。


私はにやりとした。2枚の発行番号は2番と3番だった。


つまり、私のように、発行できない旨の書類を申請したのは、その高校が創立して以来、これまでたった1人しかいなかったのだ。


おそらく、私の前に同様の書類を発行してもらった人も、大学受験をしたのだろう。


成績証明書を発行できないのは卒業後6年以上経過している者だ。はたしてその人は何年経っていたのだろうか。だが私のように40年というのはないだろうなあ。


 
とにかく、私は玉砕覚悟で、その大学を受けることを決めた。


はたしてどうなるか。


でも、挑戦は楽しい。さらに、挑戦というより冒険だ。わくわく。