受験老人日記~高齢で医学部と司法試験に大挑戦~

還暦を迎えた男が、医学部と司法試験を同時に合格することを目指すという無謀な冒険に乗り出した

悪夢

コロナに感染した・・・・


朝、起きると喉が痛い。大丈夫かと思って体温を測ると、37度を超えていた。
普段の体温が35度台の受験老人にとっては37度というと高熱の部類だ。


やべっ。
頭にコロナのことが浮かんだ。
今は関係なくなったが、確か検査基準は37.5度が4日間だっけ。
しばらく寝ていても収まらない。そしてもう一度測ると、今度は38度になっていた。


慌てて病院に行った。
医師は早速、最新のシステムで検査してくれた。
結果はすぐに出た。


・・・・「陽性です。」


受験老人は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
大変だ・・・・


まず頭に浮かんだのは妻のこと。
妻は極めて慎重にコロナ対策をしている。
帰宅時には荷物置き場と導線に広告を敷き、私をすぐに入浴させている。
汚染ゾーンを明確に区別している。
その妻が、私の感染を知ったら何と思うか。
彼女に感染させていない保証は全くない。私の責任だ。


次に、両親のこと。
受験老人はどこでコロナに感染したか分からないが、帰省後1週間も経っていない。
両親とは確実に濃厚接触している。


高齢の父・・・・毎日食事を一緒にしたほか、近くでマスクなしで話した。
父は耳が遠く、すぐそばで大声で話してやらないと聞き取ってもらえない。
今年初めに肺炎になったばかりである。
万一私から感染しているとすると、持ちこたえれないのではないか。


介護施設に入院している母。
私は病院に付き添い、ずっと手を握っていた。
母が感染すると、施設全体に広がってしまう・・・・。


受験老人は真っ青になった。まさか自分が感染するとは。
そして、この感染で、どれだけ多くの人たちに迷惑をかけることになるか・・・・。


勤務先で自分のことをいろいろ噂されるのが目に浮かぶ。
○○さん(受験老人の名)、感染したんだってさ。
しょうがねえなあ、たまにしか来ないのに感染したって。
この部署もおかげで皆自宅待機になるのか。ほんと、いい迷惑だな。
仕事たまってるのに、どうしてくれる。
早く辞めればいいのに。


いやなことばかり想像する。二度と職場には行けない。


受験老人がショックで寝込んでいると、いつの間にか、そばに娘や息子がいた。
受験老人の感染に驚き、慌てて帰って来たんだろう。
「お父さん、大丈夫???」2人とも受験老人を気遣ってくれる。
だが、ふと、彼らがマスクを付けていないのに気付いた。大丈夫なのか???


「おい、お前ら、コロナが伝染るじゃないか。来るな。」
いくら言っても子供らは聞こうとしない。ますます近くにすり寄ってくる。
「やめろ、やめろっ、わぁ〜。」
受験老人は大声で叫んだ。


・・・・ 


・・・・


・・・・


目が覚めた。びっしょり寝汗をかいていた。
妙にリアルな夢だった。悪夢だと言ってよい。
そういえば、随所におかしなところがあった。
コロナと判断されたのに自宅で寝ていた。
すり寄ってきた娘や息子たちは小さい頃の姿だった。


読者の方には驚かせて申し訳ない。
でも本当に、一昨日、こんな夢を見たのだ。


我々は皆、自分だけはコロナに感染することはない、と思っている。
でも、可能性はゼロではない。
どんなに注意していても起こるものである。
そして、実際にかかったら・・・・悪夢が現実のものとなる。


コロナ警察も、皆の気を引き締めるため、ある意味理解できる。
そして一人一人が感染しないような努力がもちろん必要だ。
だが、いったん感染した者に対しては、差別せずやさしい社会であってほしい。