受験老人日記~高齢で医学部と司法試験に大挑戦~

58歳の何のとりえもない男が、医学部と司法試験を同時に、しかも短期間で合格することを目指すという無謀な冒険に乗り出した

やっと光明を見出すも・・・・


私は追いつめられていた。


頭の中を占めるのは、常に、失敗して何も言えずに立ち尽くす私。


どうしよう。どうしよう。


そのことを考えるといつも頭が真っ白になるのだった。



しかし、もう体育祭の結団式が数日後に迫ってきた時に私は少し、ひらめいた。


「そうか。話すことを考えてあらかじめ練習しておけばいいんだ。」



単純なことだった。


私はそれまで、スピーチというものは、何も事前に考えず、その場の雰囲気で喋ればいいやとだけ考えていた。


それでウィットに富んだことを喋れてこそ本物だと思っていた。


だがよく考えると、そんなことをしている限り、絶対自分にはできないということが分かってきた。


単純な理屈だった。勉強と同様、スピーチだって練習すればするほどうまくなるのではないかということに、やっと気づいたのだった。



私は、喋ることを考えた。


次にそれを練習した。家では恥ずかしいので、家のそばの大きな川のほとりにたたずみ、誰も見ていないのを確認しては練習した。


すると、だんだん自分の中で、できるぞという気持ちが起きてきた。



さて、結団式の日。私はチームリーダーとして1、2、3年生の前で決意のほどを述べた。


うまくいった。私はほっとした。


そして、体育祭の終わった後も、私はまずまずの締めの言葉を言うことができた。


終わってみて、脱力した。


私の高校生活は、勉強と、部活と、このスピーチへの恐怖感だけで明け暮れていたような気がする。


はたして私の人間的成長はあったのだろうか。


だがもう10月になっていた。大学入試までもう数か月しかなかった。