受験老人日記~高齢で医学部と司法試験に大挑戦~

還暦を迎えた男が、医学部と司法試験を同時に合格することを目指すという無謀な冒険に乗り出した

よい医者、悪い医者(5)

(前回の続き)


網膜剥離と診断された受験老人である。
いささかショックだった。
というのは、せっかく大きな、清潔でかつ豪華な病院だと思って来たのに、
医師の診察はことごとく裏目に出たのである。


1つ、東北の病院で、強く硝子体手術という根本治療を推奨されたにもかかわらず
この病院ではレーザー治療で大丈夫、大丈夫と言われた。
しかし、とめたはずの穴から大量に混濁したものが流れ込んだ。


2つ、それでも大丈夫、大丈夫と言われ、10日間待てばよくなると言われた。
そこで念のため2週間安静にしたが、結局、網膜剥離になった。


いったい、この病院の見た目と実態は乖離があるのか????
疑念がわいた。


だが、もはや網膜剥離になってしまった身。絶対安静が必要だ。
左目の前には、黒い幕がどんどん広がってきている。
それがカーテンのように、目の中で揺れている。
医師によると、この黒い影が、黄斑という、網膜の中心部分に達してしまうと、
視力はガクンと落ち、戻らないとのこと。


どんどん暗闇は広がり、今にも中心部に達しそうだった。
その日は金曜日だった。
だが、医師の手術の予定は詰まっており、受験老人の手術は月曜日の夕方になるとのこと。
おいおい、何とかしてくれ。叫びだしたい気持ちだった。


情けないものである。自分がとんでもなく臆病者に思えた。
じっとして、まんじりとも動くまいと思った。


金曜の夕方から翌週月曜の夕方まで、丸3日間は長かった。
しかし、救われたのは、やはり立派な病院の設備、ぴかぴかで新しくかつ清潔だった。
また、食事。栄養面も考えてはいるが、びっくりするほどおいしかった。
何よりも、看護師さんたちは親切だった。皆。明るく、きびきびしていた。
自然と、入院するならこんな病院が理想だなあ、と思った。


そして、やっと手術日を迎えた。
いつも最後に診断を下してくれる、上級医師が術者だった。
「大丈夫。しっかりやるから。」
医師はそう言った。ただ、ちょっとその言葉には素直にうなずけなかった。


手術が始まった。


(次回に続く)


(11月19日)
何もしなかった。


(11月20日)
・腕立て28回
・腹筋 42回


11月19日は丸1日、忙しくて何もできなかった。日記も書けなかった。
このため腕立て回数は28回のまま。
まあ仕方ない。こんな日もある。