受験老人日記~高齢で医学部と司法試験に大挑戦~

還暦を迎えた男が、医学部と司法試験を同時に合格することを目指すという無謀な冒険に乗り出した

経緯(11)~正直者~

(前回の続き)


受験老人は、今回の面接に際し、ある覚悟を持っていた。
すなわち、自分自身に正直になろう、ということ。


当然ながら、他の受験生は医学部の面接対策はばっちり講じてきているだろう。
だが、受験老人はこの年になって、小手先の理論構築はしたくなかった。
むしろ、そのように正直に答えることにより、大学側の考えを知りたいと思った。


以前にも書いたと思うが、この大学は、当初、面接は集団面接だけの実に軽い扱いだった。
しかし、受験老人が合格最低点をオーバー(といっても5点だが)していたにも関わらず落ち、その理由を大学に問い合わせた次の年から、この大学の面接システムが変わった。


まず1人での、3~4人の面接官による面接。
次に集団での討論会。
そして、前の2つの面接で問題があると判定された者に対する、さらなる追加面接。
という、3段階で行われるようになったのである。全国一、厳重な面接かもしれない。
ただし、第3段階目の面接になるものの数は少なかった。


受験老人は、まず、この最初の面接に臨んだ。1対多面接である。
そこでは当たり障りのない、趣味の話などを聞かれた。
しかし、その後に、次のようなことを聞かれたのである。
「あなたはある医療機関に勤めているとします。
コロナがはやり始め、感染が蔓延している地域が出始めました。
そこで、応援するため、各部署から1人ずつ、その地域に派遣させることになりました。
あなたはどうしますか。」


皆さんならどう答えるだろうか。


もし、受験老人が、真に受かりたいと思っていたならば、当然の解答として、
「自分は、医師として、患者を救うために命を懸けたいと思います。困っている患者がいる地域があるのであれば、そこに行って医療活動をするのは、医師として当然の使命です。そのように、人の役に立つことをすることこそ、自分の願いです。」
などと言い切ったら、まあ、そんなに悪い点はつかなかっただろう。
というか、皆、そのような答えをするに違いない。
実際、医師になった場合には、決して現地に行こうとしない者でも、この場ではこう答えるだろう。
そもそも、面接官たちは、そのような場面で応募するのか??


受験老人は、こう言った。自分の事情を考えたうえである。
「行きたい気持ちは山々です。
しかし、もし実際に、今、そのような場面に遭遇したとしたら、
正直、自分は素直に志願できないかもしれません。
コロナの場合、高齢だと、感染すると重篤になることが多いことが知られています。
せっかく志願しても、感染して、皆に迷惑をかけるかもしれないと考えると躊躇します。
しかし、他に誰も志願者がいなければ、志願してもいいと思います。」


私の答えに、面接官たちは顔には出さなかったが、あまりよい印象を受けなかっただろう。
しかし、正直なところ、全体がうまく回ることを考えると、その方がいいのではないか。
現地に行ったはいいが、老人医者は感染して殉職する可能性は若い人より格段に高い。
私自身は別に構わないのだが、結果的にちゃんとした働きができず、周囲に迷惑をかけたとしたら、意味がない。


受験老人自身は、このような活動は、本来、積極的にやりたい方だ。
実際に、東日本大震災が発生した時、役所の中で真っ先に手を挙げ、福島に何十度も往復して被災者の世話に当たった。
おそらく私ほど、現地に出張を繰り返した者はいないと思う。被ばくもしたかもしれない。


だが、皆に迷惑をかける場合は、それとはまた違うだろう。
そのような説明も詳しくしたかったが、残念ながらその時間はなかった。
高齢の医学部受験生は、やはり、特殊な立場なのである。


(次回に続く)


(11月12日)
・腕立て 22回
・腹筋  33回
・ヨガ
・筋トレ
腕立ての回数は毎日1回ずつ増えていく。減ることはない。
受験老人のルールとしては、やらない日が1日あれば、その翌日は同数回。
やらない日が2日あれば、その翌日は1回減らすことにしている。
しかし、初期のころはやらないこともあったが、
最近はルーティンとなり、とりあえず毎日できている。
この調子で30回までできれば・・・・その時は自分自身に褒美をあげたい。