経緯(11)~正直者~
(前回の続き)
受験老人は、今回の面接に際し、ある覚悟を持っていた。
すなわち、自分自身に正直になろう、ということ。
当然ながら、他の受験生は医学部の面接対策はばっちり講じてきているだろう。
だが、受験老人はこの年になって、小手先の理論構築はしたくなかった。
むしろ、そのように正直に答えることにより、大学側の考えを知りたいと思った。
以前にも書いたと思うが、この大学は、当初、面接は集団面接だけの実に軽い扱いだった。
しかし、受験老人が合格最低点をオーバー(といっても5点だが)していたにも関わらず落ち、その理由を大学に問い合わせた次の年から、この大学の面接システムが変わった。
まず1人での、3~4人の面接官による面接。
次に集団での討論会。
そして、前の2つの面接で問題があると判定された者に対する、さらなる追加面接。
という、3段階で行われるようになったのである。全国一、厳重な面接かもしれない。
ただし、第3段階目の面接になるものの数は少なかった。
受験老人は、まず、この最初の面接に臨んだ。1対多面接である。
そこでは当たり障りのない、趣味の話などを聞かれた。
しかし、その後に、次のようなことを聞かれたのである。
「あなたはある医療機関に勤めているとします。
コロナがはやり始め、感染が蔓延している地域が出始めました。
そこで、応援するため、各部署から1人ずつ、その地域に派遣させることになりました。
あなたはどうしますか。」
皆さんならどう答えるだろうか。
もし、受験老人が、真に受かりたいと思っていたならば、当然の解答として、
「自分は、医師として、患者を救うために命を懸けたいと思います。困っている患者がいる地域があるのであれば、そこに行って医療活動をするのは、医師として当然の使命です。そのように、人の役に立つことをすることこそ、自分の願いです。」
などと言い切ったら、まあ、そんなに悪い点はつかなかっただろう。
というか、皆、そのような答えをするに違いない。
実際、医師になった場合には、決して現地に行こうとしない者でも、この場ではこう答えるだろう。
そもそも、面接官たちは、そのような場面で応募するのか??
受験老人は、こう言った。自分の事情を考えたうえである。
「行きたい気持ちは山々です。
しかし、もし実際に、今、そのような場面に遭遇したとしたら、
正直、自分は素直に志願できないかもしれません。
コロナの場合、高齢だと、感染すると重篤になることが多いことが知られています。
せっかく志願しても、感染して、皆に迷惑をかけるかもしれないと考えると躊躇します。
しかし、他に誰も志願者がいなければ、志願してもいいと思います。」
私の答えに、面接官たちは顔には出さなかったが、あまりよい印象を受けなかっただろう。
しかし、正直なところ、全体がうまく回ることを考えると、その方がいいのではないか。
現地に行ったはいいが、老人医者は感染して殉職する可能性は若い人より格段に高い。
私自身は別に構わないのだが、結果的にちゃんとした働きができず、周囲に迷惑をかけたとしたら、意味がない。
受験老人自身は、このような活動は、本来、積極的にやりたい方だ。
実際に、東日本大震災が発生した時、役所の中で真っ先に手を挙げ、福島に何十度も往復して被災者の世話に当たった。
おそらく私ほど、現地に出張を繰り返した者はいないと思う。被ばくもしたかもしれない。
だが、皆に迷惑をかける場合は、それとはまた違うだろう。
そのような説明も詳しくしたかったが、残念ながらその時間はなかった。
高齢の医学部受験生は、やはり、特殊な立場なのである。
(次回に続く)
(11月12日)
・腕立て 22回
・腹筋 33回
・ヨガ
・筋トレ
腕立ての回数は毎日1回ずつ増えていく。減ることはない。
受験老人のルールとしては、やらない日が1日あれば、その翌日は同数回。
やらない日が2日あれば、その翌日は1回減らすことにしている。
しかし、初期のころはやらないこともあったが、
最近はルーティンとなり、とりあえず毎日できている。
この調子で30回までできれば・・・・その時は自分自身に褒美をあげたい。
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