受験老人日記~高齢で医学部と司法試験に大挑戦~

58歳の何のとりえもない男が、医学部と司法試験を同時に、しかも短期間で合格することを目指すという無謀な冒険に乗り出した

スランプ脱出!


私は次の日から授業中に質問をすることにした。


私にとって幸いだったのが、できない生徒と違い、自分は極めてよくできる生徒だったことだ。


だから、質問はいくらでも考えることができ、先生の答えに対してさらに疑問を呈することもできる。



ええい、ままよと手を挙げた。「先生、質問があります。」


その声も震えた。いつものように、私の心臓は早鐘のように鳴りはじめた。


だが、今度こそ、絶対に逃げないぞ、という覚悟がその時の私にはあった。


先生は、おや、珍しいなという顔をしつつ、私を当てた。


そして私は話し始めた。



私の話したこと・・・・それは質問というより、自説の主張だった。


おや・・・・不思議なことに、やや声は震えてはいるものの、なぜか気持ちいい。


自分で自分の言っていることがよく分かる。


いつものように、先生から順に当てられて、自分が何を言っているのかも分からないまま、ドキドキでパニックに陥ってしまうのと全然違う。


私は何と、質問で15分くらいを使ってしまった。


まあ、他の生徒や、先生にとってはいい迷惑だったろうが。



私は席に着いた後、興奮していた。だがそれは、気持ちのいい興奮だった。


自分が考えたことを成し遂げる、それはこれまでにあまり経験したことがないことだった。


そしてその後、私は調子に乗ってそのような方法を3、4度続けた。


すると・・・・震えは全くなくなったのだ。


今までのことがウソのようだった。私は何とか自分の症状を克服できたのだ。



私には大きな自信がついた。


自分が嫌なことに対し、決して逃げないこと。


むしろ自らそうした機会を求め、取り組んでいくことがいかに大切であるか。


初めて分かったような気がした。



もちろん、他の人たちから見たら、アホみたいなことに違いない。


もしかして、私がひどく緊張していたことなど、気づいていない者も多かったかもしれない。


でも、要は逃げないこと。積極的にチャレンジしていくことである。


そして、やりとげることだ。



今回の医学部と司法試験への挑戦は、その延長上にあるのかもしれない。


馬鹿だと思うかもしれないが、私なりの一つの挑戦なのである。



(なお最近は、私のように対人恐怖に陥った人のために、無料で参加できるようなサークルもいくつかできている(トーストマスターズ等)。本当は、学校がもっと積極的に取り組んでいくべきだと思うのだが。)