受験老人日記~高齢で医学部と司法試験に大挑戦~

58歳の何のとりえもない男が、医学部と司法試験を同時に、しかも短期間で合格することを目指すという無謀な冒険に乗り出した

試行錯誤


そのような状態はずっと続いた。


授業中、順番に当てられる。


当てられる少し前から私の心臓は早鐘のように鳴った。


口がバクバクして声が出ないのである。


先生が、そして皆が怖くなった。


自殺も考えた。


その頃はおそらく、うつ病とも言ってよい症状になっていたのだろう。



治る方法は試してみたが、どれもうまくいかなかった。


古代ギリシャの哲学者・雄弁家が石を口に突っ込んで話す訓練をしたと聞けばそれを真似た。


十分な睡眠時間が必要だと聞けば帰宅後すぐ寝た。だがかえって寝られなくなり、睡眠が浅くなった。


腹筋を何百回もやり、腹の力を強くした。


座禅を組んだ。平常心を保とうとした。


だが相変わらず、それらをいくらやっても、全く効果はなかった。


授業で当てられ、答える前にはやはり、心臓が飛び出して死んでしまうくらい速く鳴るのである。


私は絶望の底に沈んだ。もはや八方塞がりか。



そんな時、梅田薫という人が書いた「精神強化療法」という本を読んだ。


その本には、実際に彼の陥った症状が赤裸々に書かれていた。


彼の症状は私の場合と全く同じだった。


緊張する。声が震える。手が震える。



彼は修行をいくつもやった。


いろいろな名前の付いた道場を同時様を訪ねた。だが効果はなかった。


断食を繰り返したが、うまくいかなかった。


私には、彼の気持ちは痛いほど伝わった。


そして、彼はそんな運命に陥ったことで、人を恨み、親を恨み、世の中を恨んだ。


その気持ちも同じだった。



私は、彼がどのような運命になるのか、興味を持ちながら、その本を焦りながら読み進めた。