受験老人日記~高齢で医学部と司法試験に大挑戦~

58歳の何のとりえもない男が、医学部と司法試験を同時に、しかも短期間で合格することを目指すという無謀な冒険に乗り出した

奈落の底へ


それ以来、私はなぜか、授業で当てられると緊張して声が震えるようになった。


なぜか分からなかった。


皆は驚いて私を見、私が震えるのを面白がった。


(実は自分自身がそう思っているだけだったのかもしれない。)



特に困ったのが音楽の時。


一人で歌うと、緊張で声が震えた。


ビブラートどころではない。声が出ないのである。


先生は、もっと腹に力を入れろと言った。


だが私は当時、運動部に所属し、腹筋は何百回でもできる自信があった。


それとこれとは違うのである。


笛を吹くときは、緊張で手が固まった。


ぐらぐら揺れて、全く笛が吹けなくなるのである。


おかげで、音楽の成績は極めてひどいものになった。



地獄だった。


なぜこんなになるのだろう、と思った。


気にするからいけないのだろう、と考え、気にしないように努めた。


すると、かえって緊張する。


運動すればいいんだろう、と考え、懸命に運動した。


だが、全く効果がなかった。



夜も寝られなくなった。


そしてそれまでずっとトップを取っていた私の順位は、目に見えて落下していった。


そうなると、成績だけで何とか威厳を保っていた自分はつらい。


「これまではいつも1番は○○君(私の名前)だったけど、今は違うからなあ。」


と友達が噂するのを聞いた。


いい気味だと思っている者も多かっただろう。メッキが剥げたようなものだ。



どうしたらよいか分からず、どんどん奈落に落ち込んでいった。