奈落の底へ
それ以来、私はなぜか、授業で当てられると緊張して声が震えるようになった。
なぜか分からなかった。
皆は驚いて私を見、私が震えるのを面白がった。
(実は自分自身がそう思っているだけだったのかもしれない。)
特に困ったのが音楽の時。
一人で歌うと、緊張で声が震えた。
ビブラートどころではない。声が出ないのである。
先生は、もっと腹に力を入れろと言った。
だが私は当時、運動部に所属し、腹筋は何百回でもできる自信があった。
それとこれとは違うのである。
笛を吹くときは、緊張で手が固まった。
ぐらぐら揺れて、全く笛が吹けなくなるのである。
おかげで、音楽の成績は極めてひどいものになった。
地獄だった。
なぜこんなになるのだろう、と思った。
気にするからいけないのだろう、と考え、気にしないように努めた。
すると、かえって緊張する。
運動すればいいんだろう、と考え、懸命に運動した。
だが、全く効果がなかった。
夜も寝られなくなった。
そしてそれまでずっとトップを取っていた私の順位は、目に見えて落下していった。
そうなると、成績だけで何とか威厳を保っていた自分はつらい。
「これまではいつも1番は○○君(私の名前)だったけど、今は違うからなあ。」
と友達が噂するのを聞いた。
いい気味だと思っている者も多かっただろう。メッキが剥げたようなものだ。
どうしたらよいか分からず、どんどん奈落に落ち込んでいった。
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