なんと全校で〇番に!
入学した直後の実力テストが戻ってくる前、クラスの中ではその結果がどうなるか、結構話題になった。
なんせ、試験の結果が順位づけされるのである。学校全体で400人の生徒の中で。
当時は今のように中学受験がなく、大部分の者はそのような試験は受けたことがなかった。
だから、それによって、自分という人間が初めて評価されるようなものだった。
頭のよさそうな奴らが集まると、皆、クラスで一番成績がいいのは○○だろうとお互いに言い合った。中でもクラス委員のWは学校全体でも相当いいのではないかと噂された。
一方、私はそんな中、皆に歯牙にもかけられなかった。
薄汚いわ、忘れ物はするわ、ぼうっとしているわ、先生にびんたくらわされるわ。
だが、私はちょっと自信があった。
というのは、付属中学を受けようと思ってさんざん中学入試問題集を解いていたからだ。
その問題集は解答しかついていないので分からないものは分からない。
だが、正解が出るまで、むきになって問題とにらめっこしたことで、おそらく、私には恐ろしいまでの集中力が身についたと思う。
試験は、結構できたなあと思ったのだ。
だが、私が正直に「まあまあできた。」と言うと、周りの者たちは馬鹿にした。
「お前ができたというのは、30点くらいか。アホが偉そうに言うなよな。」
そして、試験が返ってきた。
それぞれの生徒は先生に結果を渡されると、成績がいい奴はそれをひけらかせた。
それに対し、「おうっ」「すごい」という声が上がった。
そして私の名が呼ばれた。私に結果を渡すとき、先生はあからさまに、変な顔をした。
私はあわててその紙を見た。
そこには「2」という数字が記入されていた。
そう、私は全校400人のうちの2番だったのである。
私がその結果を近くの奴に見せた。
それまで私を馬鹿にしていた奴は、へっと私の結果を覗き込んだ。
そして、そのあと、信じられないという顔で私を見た。
クラス中が大騒ぎになった。
劣等生で何もできないと思われていた私がすごい成績をとったのである。
急に、皆の私を見る目が変わるのが分かった。
私が家に帰り、その成績を祖父母に見せると、彼らも目を丸くした。
彼らも信じられなかっただろう。身内ですらそうなのである。
だが私は、この成績を父や母が喜んでくれるのが本当にうれしかった。
そして私は思ったのである。
自分は試験だけは頑張ろう。
試験でよい点をとりさえすれば、皆を見返してやれ、皆から見直されると。
まあそれは少し間違った思い込みだったが、とりあえずその時はそう思ったのだ。
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