受験老人日記~高齢で医学部と司法試験に大挑戦~

還暦を迎えた男が、医学部と司法試験を同時に合格することを目指すという無謀な冒険に乗り出した

受験老人自作のショート・ショート

受験老人は現在、センター試験準備等で忙しく、よく考えながらブログを書く時間がない。


そこで、昔私が書いたショート・ショートを掲載する。


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人類文明が発達し、自然界に自由に新しい法則を生み出せるような装置が発明された。


地球を美しい星にしようと考えた人類は、まず手始めに、互いに憎みあい、殺しあう世界をなくそうと考えた。


そして、こんな自然法則を成り立たせようとした。


「相手に危害を加えると、その倍の危害が自分にも加えられる。」



相手を殴ろうとすると、その瞬間に自分も2倍の強さで殴られた跡ができる。


相手を刃物で刺して血を流させると、その瞬間に自分も同じところから2倍の量血が吹き出す。


相手の首を絞めれば、自分も2倍の強さで首が絞まる。


人々はこれを「倍返しの自然法則」と呼んだ。



この「倍返しの自然法則」ができれば、きっと世の中に殺人は起こらなくなるだろうと人々は期待した。


人に危害を及ぼそうとするとき、加害者は、自分も必ず倍返しされることが頭に浮かぶ。


そうすると、寸前で思いとどまるようになると。



さて、この法則が施行される日が来た。


人類のほとんどはそれによる平和を祈りつつ、施行を示すスイッチが押された。


すると・・・・


人類はほどなく、バタバタと死んでいった。 



ビフテキを焼いて食べようとした人は、その瞬間に、自分自身が丸焼けになった。


魚をむしって食べようと人は、その瞬間に、自分の体からどんどん肉が削げ落ち、血が噴き出した。


蚊に刺され、かゆいと思って叩いた人は、その瞬間に自分自身がぺちゃんこになった。


歩いていて虫を踏んづけた人は、その瞬間に自分自身がつぶれた。



つまり、この法則を施行するとき、人間以外の生物のことを全く考えていなかったのである。


慌てて、生き残った人類は、皆、草食主義に移行した。


動物さえ食べていなければ大丈夫だと。植物は切ってもふたたび生えてくるから、痛みは感じないだろうと。


そして、人々は動物を殺さないよう、ずいぶん用心して生活しようとした。



しかし・・・・やはり、人は死んでいきつづけた。


人はいつのまにか細菌を体内に取り入れ、それを免疫で駆除しようとする。それがこの自然法則に触れたのだ。細菌も生きている。


やがて、人も、動物も、そして生物に危害を及ぼす寄食性の細菌もいなくなり、この世の中には光合成細菌と植物だけが生き残った。


宇宙には、人類や動物がいなくなった地球という青と緑の星が、とびきり綺麗に輝きを放ち続けている・・・・。


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ううむ。出来はまずまずだったか。


そういえばよく似た話が星新一のショートショートにあったことを思い出した。



神様がこの世で最も嫌われる者をこの世から消す、いわゆる最後の審判を下そうとしたというストーリーで、


人々は皆、不正に儲けた金持ちや、悪徳政治家や、極悪犯人などをそれぞれ思い浮かべた。ところが・・・・


審判が下った日、人は一斉に消えた。つまり人以外の全ての生物の一致した意見として、人間は一番嫌われていたのだ。



まあ、多かれ少なかれ、人間は、自分自身以外のものに、危害を加えつつ生きている。


しかし、危害を加えたことは歯牙にもかけないか、忘れてしまう。


一方、危害を加えられた方は、覚えていて、恨みを倍増させる。



世に戦争やテロがなくならなかったり、日常生活でもいざこざがなくならないのはこのためかも。


「倍返しの自然法則」があったら・・・・


おっと、こうして善人ぶっている私こそ、知らず知らず人や他の生き物を傷つけており、真っ先に始末されるような気が。


このブログで誰かの心を傷つけぬよう、気をつけねば。