受験老人日記~高齢で医学部と司法試験に大挑戦~

58歳の何のとりえもない男が、医学部と司法試験を同時に、しかも短期間で合格することを目指すという無謀な冒険に乗り出した

恥ずかしい出願


さて、10月になると、いよいよセンター試験の出願が始まった。


出願のための資料は、9月に学会があった時、ある大学で入手していた。守衛さんのところでもらえたのだ。


さて、それからいざ出願しようとして、大変なことに気づいた。


・・・・高校の卒業証明書が必要だというのである。


今の今まで気づかなかった。間抜けにもほどがある。何やってんだ。



とにかく卒業証明書は必要だ。そのためには出身高校に連絡して、それを入手しなければならない。


私は出身高校のホームページを見た。しゃれた作りのページになっていた。そして、手続きについて書いていないか、探した。


ぞうっとした。


こうした証明書を交付する場合、本人が高校まで直接取りに来ないとダメだというのである。


私が今住んでいるのは関東地方。私の出身高校は西日本にある。しかもど田舎でここから行くと相当時間がかかるしカネもかかる。



どうやら連絡のためのメールもないようで、直接電話するしかない。


やむなく電話した。


電話は回され、担当者につながった。


「あのう、そちらの高校の卒業生の者ですが、卒業証明書を発行してもらいたいと思いまして。」


「ええ、いいですよ。こちらに来られますか。」


「いやあ、今、関東地方にいるのでそちらにはなかなか行けません。できれば郵送等で対処していただくようお願いしたいのですが。」



すると相手が言葉に詰まった。


「ええ。通常はお越しいただくことになっているのですが、そんなに離れていたら仕方ありませんね。本人が分かる証明書と一緒に送っていただければ。大学受験か何かですか?」



今度は私が言葉に詰まる番だった。やべえっ、こんな年で大学を受けるだなんて、恥ずかしくて言えねえっ。


「いやあ〜、もう退職なんですが、再就職の際に必要になりまして・・・・」私は電話口で訳のわからないことをもぐもぐ言った。


相手は納得しかねるようだったが、私の卒業した年次を聞いて驚いたようだった。でも何とか保管されていることが分かり、送ってもらえることになった。



なお、後で知ったことだが、実際に大学を受ける際には、今度は通常の受験生は成績証明書が必要になってくる。


ただし私のように卒業して何十年も経っている者は、成績証明書は不要だ。もう高校で保管されていないだろうし、当時の成績を知ったところであまり意味がないというのがその理由だろう。


実際に私の出身高校でも、成績証明書は卒業後5年まで、単位取得証明書は卒業後20年までしか保管されていない。私のように卒業後40年近くたった者はそもそも想定外なわけだ。



その後何日かして、高校から届いた卒業証明書を入れたセンター試験申請書を持って私は郵便局に行った。


私がそれを提出しようとしたところ、係りの人が、「お子さんのですか?頑張ってくださいね。」と笑顔で私に語りかけた。


・・・・私は大きく頷いたのだった。



(まあ、こんなにこそこそしているところは、後ろめたく思っている証拠かも。自分なりに、やりたいと思ってやっていることで、恥ずかしくはないのだ。もっと堂々とありたいものだ。)